NISA(少額投資非課税制度)は、投資の利益が非課税になる制度として、多くの人に利用されています。
しかし、「NISAはやめた方がいい」という意見もあります。
なぜそのように言われるのでしょうか?
この記事では、NISAのデメリットを具体例を交えて解説し、本当にNISAを利用すべきかを考えていきます。
NISAの基本をおさらい
NISA(少額投資非課税制度)は、投資で得た利益に税金がかからないお得な制度です。
資産運用を始める方にとって大きなメリットがあり、特に長期的に資産を増やしたい人には非常に有効な制度となっています。
NISAをやめた方がいいと言われる理由
① 損益通算ができない
NISA口座で損失が出た場合、特定口座や一般口座の利益と相殺(損益通算)することができません。
損益通算についてピンときていない方も多いと思うので下記に例を示します。
(例)
- NISA口座で50万円の損失
- 特定口座で50万円の利益
通常、損益通算ができれば税金がゼロになりますが、NISAでは損失を相殺できないため、特定口座の50万円に対して約10万円(20%)の税金がかかってしまいます。
「NISAなら税金がかからない」と思っていたのに、損失が出た場合のリスクを考慮しないと逆に損をする可能性があります。
② 非課税期間が終了すると課税口座に移る
NISAには非課税期間(つみたてNISAは20年、一般NISAは5年)があり、期間が終了すると特定口座や一般口座に移管されます。
このとき、時価で移されるため、含み益がある場合は新たに課税対象となってしまいます。
例えば下記のようなケースです。
- 5年前にNISAで購入した株が50万円 → 100万円に成長
- 非課税期間終了後、100万円の時価で特定口座に移管
- その後、120万円で売却 → 課税対象となる利益は120万円-100万円=20万円
本来、50万円で購入したのに、100万円で移管されたことで本来の購入額との差額(50万円分)は非課税の恩恵を受けられず、売却時に課税対象となるのです。
③ 高配当株・個別株投資には向いていない
NISAは配当金や分配金も非課税になりますが、「配当金を受け取る方法」に注意が必要です。
配当金を証券口座で受け取る(株式数比例配分方式)と非課税ですが、銀行口座で受け取ると課税対象になります。
知らずに銀行口座で受け取ってしまうと、せっかくのNISAのメリットが消えてしまうのです。
また、個別株は短期間で大きな値動きがあるため、長期投資向けのNISAとは相性が悪い場合もあります。
④ 途中で売却すると非課税枠が復活しない
NISAでは、一度売却するとその枠が復活しません。
(例)
- 2024年に120万円分のNISA枠を使って株を購入
- 2025年に売却して現金化
通常なら、売却した分を再投資できるイメージがありますが、NISAでは一度使った枠は消えてしまうため、再投資ができません。
これは、特に短期売買を考えている人にとってはデメリットになります。
⑤ 元本保証がない
NISAは投資なので、元本保証はありません。銀行の定期預金と違い、価格変動リスクがあるため、投資初心者が「安全だと思っていたのに損をした」となる可能性もあります。
(例)
- 2023年にNISAで100万円投資 → 2024年に株価下落で80万円に
- 2025年に売却 → 20万円の損失
NISAの非課税メリットだけを考えて投資すると、相場下落時に思わぬ損をしてしまうリスクがあります。
NISAにはこんなメリットがある!
1. 運用益が非課税になる
通常、株式や投資信託で得た利益(売却益や配当金)には約20%の税金がかかります。しかし、NISAを利用すると、この税金が一切かかりません。
例えば、通常の課税口座で10万円の利益を得た場合、税金(約2万円)が引かれ、手元には約8万円しか残りません。
一方、NISA口座で同じ10万円の利益を得た場合、税金がかからず、そのまま10万円が手元に残ります。これは長期運用すればするほど大きな違いとなります。
2. 少額から投資を始められる
NISAは少額から投資できる点が魅力です。
毎日100円からや毎月数千円からコツコツ投資できるため、投資初心者でも安心して始められます。
始める際は不安を抱えている場合も多いので毎月数千円から始めてみて、実際に資金が増えていくさまを確認してから本格的に運用を開始することがおすすめです。
3. 投資のハードルが低い
NISAは非課税期間が設定されているため、税制面で有利な制度です。
それだけでなく、証券会社の口座開設や投資信託の選択がシンプルになっている点もメリットです。
初心者が投資を始めようとすると、どの口座を開設すべきか、どの銘柄を選べばいいのか迷ってしまうことが多いですが、NISAでは金融庁が厳選した投資信託のみが対象となるため、選択肢が限られ、選びやすくなっています。
4. 長期投資に最適
Nisaは長期投資を前提としており、長期間運用することで複利の効果が得られます。
毎月一定額を積み立てることで、相場の変動リスクを抑えながら安定したリターンを狙うことができます。
例えば、リーマンショックなどの金融危機時に一括投資をしていた場合、大きな損失を被る可能性があります。
しかし、NISAのように定期的に少額ずつ投資することで価格が下がった時にも自動的に安く買い付けることができ、リスクを分散できます。
5. 新NISAでさらに柔軟な運用が可能
2024年からは「新NISA」がスタートし、非課税期間が恒久化されるほか、年間投資上限額が増えるなど、より柔軟な資産運用が可能になります。
これまでの一般NISAでは5年間という非課税期間がありましたが、新NISAでは非課税保有期間が無期限となります。
そのため、より長期的な視点で資産形成を考えられるようになります
NISAを使うべき人とは?
デメリットがあるとはいえ、NISAが向いている人もいます。
- 長期的な資産形成を考えている人
つみたてNISAは20年の非課税期間があり、投資信託を活用すれば比較的安定したリターンを狙えます。 - 積立投資をしたい人
毎月決まった額をコツコツ積み立てることで、リスク分散しながら資産を増やせます。 - 株式投資の知識がある人
一般NISAを活用し、高配当株やETFに投資することで、税制メリットを活かせます。
NISA以外にもこのような選択肢があります
NISAに不安がある人は、以下の方法を検討してみるのもよいでしょう。
- iDeCo(個人型確定拠出年金)
- 掛金が全額所得控除
- 60歳まで引き出せないが、老後資金形成に最適
- 特定口座での投資
- 損益通算が可能
- NISAと違い、売却しても再投資が可能
- 高金利の預金や国債
- 元本保証が欲しいなら、安全性の高い金融商品を選ぶのも一つの手
まとめ
NISAは非課税メリットがあるものの、損益通算ができない、非課税期間終了後の移管時に課税されるなどのデメリットもあります。
特に短期売買をする人や個別株投資を考えている人には向いていない場合があります。
しかし、長期投資を前提にすれば、NISAは資産形成に有利な制度です。メリット・デメリットを理解し、自分に合った投資方法を選ぶことが重要です。